おばあちゃんのパンフレット
6年前に母の米寿のお祝いで親せきの集まりがありました。
コロナ前ということもあり、20人前後の大人数で宴会の席が設けられることになり、そこで、母の説明書になるようなパンフレットを作ることになりました。
パンフレットは見開きのA3サイズの2つ折りで、表紙・裏表紙・見開き1ページで作りました。
表紙には夫婦で並んだ母と父の写真を載せて、裏表紙にはお祝い会のもくじをまとめました。
そして、見開き1ページには母の経歴をまとめてみました。
母の経緯をまとめるのは大仕事になりました。母の友達にもまだまだ元気な方が何人かいたので、私たちを生む前の母の話を聞きました。
私たちの知らない母を知れました。私たちが家を出るまでの母をまとめました。姉妹の母への思いを文字としてまとめました。
そして、独り立ちした8人の孫たちから見たおばあちゃんとの出来事とどんなおばあちゃんだったかをまとめました。
孫から見たおばあちゃんを知れました。
宴会は畳の上でおいしいものを食べるだけの静かな会でした。
ただ、大人数の飲み会と違う点が1つだけありました。
それは、席の豪華な食事の横に1冊のパンフレットが添えられているところです。
普段は静かでにこにこしている母ですが、宴会では普段の笑顔に加えてたまに涙が流れているのがわかりました。
パンフレットのおかげで話題は盛り上がり、母が泣く度にそれを見た親せきからは笑いが何度も起きていました。
母の遺品を整理する中で多くのものを処分することとなりましたが、おばあちゃんのパンフレットは捨てず本棚の隅に挟んであります。
パンフレットを作るのに知れた多くの人の母への思いと、宴会で母の涙から生まれた親戚の笑い声は今でもいい思い出として残っています。